こんにちは、デンスケです!
技術士第二次試験の電気電子部門(電力・エネルギーシステム科目)の過去問対策を進める中で、このような悩みを抱えていませんか?
- 「問題文にある『複合的な問題』って、具体的に自分の部門では何を取り上げたら正解になるのか分からない」
- 「多面的な観点と言われても、どのように観点を決めればいいのか見当もつかない」
- 「制限時間内に合格ライン(A判定)に届く論文の構成や、専門用語の使い方の実例が見たい」
技術士試験の論文は、単なる電気の知識を披露する場ではありません。しかし、試験本番の極限状態では「とにかくマス目を埋めなければ」という焦りだけで手が止まらなくなり、結果として出題者の意図や評価基準を意識できないまま答案を書き終えてしまう受験生が非常に多いのが現状です。
試験本番でA判定を掴み取るためには、公式に公表されている「評価基準」を正しく理解し、それに合わせた的確な記述戦略をとることが必須です。
そこで今回は、電気インフラ業務に10年以上携わってきた私の実務経験をもとに、私が実際の試験で記述し、合否通知で「A判定(得点率60%以上)」をいただいた『令和5年度 電力・エネルギーシステム問題Ⅲ-2(再エネ大量導入と送電可能量拡大)』の再現答案を徹底的に解説します!
本記事を読めば、「回答用紙の文字数を自然と埋められる論文の骨組み(型)」と、そこに「合格に必要なコンピテンシーを正しく落とし込むテクニック」が同時に手に入ります。
私が試験本番中にどのような意図を持ってキーワードを選び、限られた時間と文字数の中でどう論文を組み立てたのかという「デンスケの思考プロセス」まで余すことなく公開します。
「何を書いたらいいか分からない」「時間内に書き切れるか不安」という状態を脱出し、明日からの過去問演習にすぐ活かせる実践的な内容です。ぜひ最後まで読み込んで、あなたの論文作成のヒントにしてください!
令和5年度 選択科目Ⅲ-2「再エネ大量導入と送電可能量拡大」の問題文
2030年再エネ目標の達成や2050年カーボンニュートラルの実現に向けては、再エネの大量導入を支えるための電力流通設備の増強が重要である。これを実現していくためには費用を可能な限り抑制する必要があり、既存系統の有効活用が不可欠となる。このような状況を踏まえて、電力・エネルギーシステム分野の技術者として、以下の問いに答えよ。
(1)既存系統における送電可能量拡大に関する課題を多面的な観点から抽出し、その内容を観点とともに3つ示せ。
(2)前問(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題の解決策を3つ示せ。
(3)前問(2)で示した解決策に伴って新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
出典:公益社団法人 日本技術士会「技術士第二次試験 電気電子部門 選択科目 電力・エネルギーシステム問題(令和5年度)」
問題文 (1)~(3) ごとのA判定再現答案と解説
1.既存系統における送電可能量拡大に関する課題
この設問では、カーボンニュートラルや再エネ大量導入という「あるべき姿」に対し、ボトルネックとなっている既存系統の容量制限という「現状とのギャップ(問題)」を正確に捉え、技術者として取り組むべき「問題解決(課題抽出)」の資質が問われています。
問題文には「費用を可能な限り抑制する」という強力な縛りがあります。そのため、お金のかかる「送電線の新設や全面建て替え」は完全に選択肢から外しました。狙うべきは、「今ある設備のポテンシャルをいかに限界まで引き出すか」という運用の効率化です。
そこで私は、設備を縛っている要因を「電力供給の安全ルール(発電制約)」「設備の物理的限界(機器耐量)」「運用の前提条件(潮流想定)」の3つに分解し、それぞれのギャップを埋めるための課題を抽出する戦略を取りました。
実際の答案では、単に思いついた課題を並べるのではなく、問題文の指示通り必ず「観点」を明記してから、ギャップを埋めるための課題(やるべきこと)を論理的に記述しています。
- 「発電制約の観点」では、複数系列運用などの安全ルールが既設系統の有効活用を妨げている点(問題)を指摘し、この「安全マージン(発電制約)を最小化していくこと」を課題としました。
- 「機器耐量面の観点」では、一律で最も厳しい過酷条件を前提にしている点(問題)を突き、刻々と変化する周囲環境に応じた「運用容量の適用(ダイナミックレーティング)」を課題としました。
- 「潮流想定面の観点」では、需要や再エネの最悪条件を重ねて潮流を想定している点(問題)を挙げ、実態に即した「合理的な潮流想定を行っていくこと」を課題としました。
このように、机上の一般論ではなく「送電線運用の現場で何がネックになっているか」を3つの軸で明確に書き分けることで、課題抽出能力を採点官にアピールしています。
(1)発電制約の観点
送電線や変圧器の電力流通設備は、複数系列を並列に運用しており、1系列が停止しても問題のないようにあらかじめ発電制約を設けている。電力設備を守るためには有効であっても、既設系統を有効活用としているとは言い難い。発電制約の観点から、発電制約を最小限にしていくことが、送電可能量の拡大に対する課題となる。
(2)機器耐量面の観点
送電線や変圧器は、外気温、風速、日射量等の周囲環境によって流すことのできる潮流が異なる。想定される最も過酷な前提条件をもとに算出した運用容量を採用することは、既存系統の有効活用には反している。
機器耐量面の観点から、刻々と変化する周囲環境に応じた運用容量を適用していくことが課題となる。(ダイナミックレーティング)
(3)潮流想定面の観点
電力流通設備の潮流を運用容量以下に収めるため、需要状況、再エネの発電状況など、過酷な条件を用いて潮流を想定することは、既存系統の有効活用の観点からは最適ではない。潮流想定面の観点から、合理的な潮流想定を行っていくことが課題となる。
2.発電制約の課題に対する解決策
この設問では、前問で挙げた課題の中から最も改善の余地が大きい「最重要課題」を1つ選び、それを解決するための具体的な「問題解決(方策提起)」の資質が評価されます。
最重要課題には、ハード(設備)を変えずにルールを変えるだけで最大の効果が期待できる「発電制約の最小化」を選びました。
解決策の選定で意識したのは、「現在、日本の電力業界でまさに導入・議論が進められているリアルな最新技術」を提示することです。教科書的な古い対策ではなく、実務で使われている(あるいは導入されようとしている)生きた技術を書くことで、技術者としての引き出しの多さと実務能力の高さをアピールする方針としました。
実際の答案では、抽出した課題を確実にクリアできる具体的な解決策を3つ提示し、専門用語を交えてそのメカニズムを解説しています。
- 「N-1電制の活用」:万が一の故障時だけ瞬時に解列させる仕組みを入れることで、平常時の運用容量を従来の「1回線容量制限」から「2回線容量」へと一気に拡大する具体的なメリットを記述しました。
- 「ノンファームシステムの適用」:実需給に近い断面で高精度な潮流想定を行い、容量超過時のみ自動で出力を抑制することで、無駄な発電制約量を直接減少させる効果を明記しました。
- 「再給電ルールの整備」:先着優先という従来の古い慣習から、出力調整が容易な火力機を優先的に抑制するなどの「ルールの見直し(仕組みづくり)」を提示しました。
ただ技術名を並べるだけでなく、「その技術を入れることで、どうして送電可能量が拡大するのか」という因果関係を文字数内にスッキリ落とし込むのがポイントです。
送電可能量拡大に対して最も改善の余地があると想定される課題(1)を最重要課題と考える。解決策を以下に示す。
(1)N-1電制の活用
N-1故障が発生時に、瞬時に解列させ、残設備の運用容量以内となるように潮流を制限させる装置をN-1電制という。例えば、2回線送電線の場合、従来、運用容量が1回線容量に制限されていたが、N-1電制を適用することによって、平常時の運用容量を2回線容量まで拡大することが可能となる。また、N-1電制により解列する電源を新規参入者に限定せず、既連系者も考慮することにより、より効率的な運用が可能となる。
(2)ノンファームシステムの適用
実需給に近い断面で電力流通設備の潮流想定を行い、運用容量を超過する場合は自動で発電機の出力を抑制するシステムをノンファームシステムと言う。実需給に近い断面の潮流想定は精度が高いこと、部分抑制も可能としていることから、発電制約量を減少させる効果がある。
(3)再給電ルールの整備
系統の混雑が発生した場合、従来は先着優先の考え方に基づいて来たが、後着事業者に発電制約を設けることが必ずしも有効とは限らない。出力調整可能な火力機を優先的に抑制するなど、優先順位を見直すことによって正味の送電可能量を拡大することが可能となる。
3.新たに生じうるリスクと対策
最後の設問では、前問で提起した解決策(新技術・新ルール)を導入したことによって、トレードオフとして二次的に浮かび上がってくる将来的な懸念事項を見つけ出し、その防衛策を講じる「評価」のコンピテンシーが問われます。
自動制御システム(N-1電制やノンファーム)を盛り込み、再エネを大量に系統に繋ぎ込むということは、裏を返せば「システムが止まったときの影響が甚大になる」「系統の電気的特性(インピーダンス等)が変わる」ということです。
このように、「良かれと思って導入した技術が、運用現場にどんな牙を剥くか」を多角的に予見する戦略を取りました。
リスクと対策を書くコツは、抽象的な表現を完全に排し、「どんな最悪のトラブルが想定され、それをどう機能的・実務的に防ぐか」をセットで具体的に記述することです。
実際の答案では、インフラの安定供給を脅かす以下の2大リスクを明確に書き分けました。
- 「システム停止リスク」:自動制御がコケた際の設備損壊や公衆災害を防ぐため、システムの「二重化・セキュリティ対策」というハード面と、「人間系での連絡体制・手順の整備」というソフト面の両輪で対策を提示しました。
- 「短絡容量の増大リスク」:再エネ連系拡大に伴い、短絡電流が遮断器の定格を超過して波及停電やリレー誤動作を起こすリスクを指摘。対策として「遮断器の更新」「限流リアクトルの設置」「系統分割」といった、電力エンジニアなら誰もが納得する実務的なハード対策を具体的に列挙しました。
「評価」の設問では、机上の空論ではなく、実際の運用で起こりうるリスクをどれだけ解像度高く想定できているかが、A判定を決定づける分かれ目になります。
(1)システム停止リスク
N-1電制やノンファームシステムを適用した場合、システム停止時に運用容量が不足したり、運用容量超過による設備損壊や公衆災害のリスクが生じる。対策として、システムの二重化やセキュリティ対策、自動点検・自動監視機能の実現があげられる。また、システム停止時に人間系で対応するための手順や連絡体制を整備することも重要である。
(2)短絡容量の増大
既存系統における送電可能量を拡大する方策を実施した場合、従来の系統制約では連携できなかった発電機が連系し、短絡容量が増大する可能性がある。短絡容量の増大は、短絡電流が遮断器の定格遮断電流を超過し、設備損壊や波及停電の発生リスクを生む。また、短絡電流の増大により、保護リレーが誤動作し、不要停電が発生するリスクもある。対策として、発電機の連系検討において、短絡容量をしっかりと検討し遮断器の定格遮断電流の問題がある場合は、遮断器の更新、源流リアクトルの設置、系統の分割などの対策をとる。保護リレーの問題の有無も確認し、問題がある場合は保護方式の変更やCT飽和対策などをとる。
以上
おわりに|A判定の「型」を自分の武器にしよう
今回は、令和5年度試験の選択科目「問題Ⅲ-2(再エネ大量導入と送電可能量拡大)」を題材に、公表されている評価基準に沿った記述戦略を詳しく解説しました。
技術士の論文試験は、単に知識を暗記しているだけでは合格できません。出題者がどの設問で「どのコンピテンシー(問題解決や評価など)」を求めているのかを正確に看破し、それを限られた文字数の中で採点官にアピールする「文章構成の戦略」が不可欠です。
論文作成において、「文字数を埋めるだけで精いっぱい」という状態から抜け出すためには、合格に必要なコンピテンシーをあらかじめ組み込んだ「論文の骨組み(型)」をどれだけストックできているかが勝負を分けます。今回ご紹介した思考プロセスや構成のポイントを、ぜひあなたの過去問演習でも繰り返し実践し、自分自身の得意なパターン(論文の型)として落とし込んでみてください。
技術士二次試験の合格率を飛躍的に高めるステップアップ案内
当ブログ『電気サラリーマンblog』では、電気電子部門(電力・エネルギーシステム科目)の合格を目指す受験生のために、完全独学での突破口となる実践的なコンテンツを公開しています。
今回の「問題Ⅲ」をマスターしたあなたが、さらに論文の打率を根底から引き上げるために、絶対に続けて読んでほしい3つの厳選記事をピックアップしました。
あなたの今の対策フェーズに合わせて、ぜひチェックしてみてください!
① 【最優先】迷いを断ち切る「合格の土台」を作りたい方へ
長年勉強しても技術士論文が通らない最大の原因は、実はコンピテンシー(資質能力)の誤解にあります。「高い専門知識をアピールしなければ…」と頭を悩ませ、手が止まってしまう迷いは、試験制度の歴史的な変遷と「現在の国際標準(IEA準拠)」を客観的に紐解くことで一発で解消されます。私が完全独学で突破したプロセスの「すべての土台」となった合格の本質を徹底解説しています。
② 【設問Ⅰ対策】減点されない文章構成のテンプレートを手に入れる
問題Ⅲの記述スタンスとほぼ同じ出題スタイルである「設問Ⅰ(必須科目)」の課題抽出法を徹底解説しています。「複合的な問題」を前にしても手が止まらず、A判定をもぎ取るための普遍的な文章フレームワークが身につきます。
③ 【最新年度】もう一つの「独学A判定」再現答案からアプローチを学ぶ
本記事の思考プロセスが、最新の試験でどのように活かされているかを確認できる「令和6年度過去問のA判定再現答案と解説記事」です。年度ごとの出題テーマ(着雪不具合や送電線増容量対策)の違いを比較・分析することで、本番の初見の問題に対する対応力が一段と深まります。
電気インフラの未来を担う技術者として、あなたが技術士の栄冠を掴むことを心から応援しています。一緒に一歩ずつ進んでいきましょう!





