電気回路の計算を勉強していて、複数の電源が含まれる回路をスマートに解ける「重ね合わせの理」(物理や数学の分野では「重ね合わせの原理」とも呼ばれます)に出会ったとき、多くの方が次のような疑問やつまずきを抱えます。
「電源が2つあるからって、勝手に別々に計算して最後に足し算(重ね合わせ)して、なんでそんな都合よく辻褄が合うの?」
「電圧源を消すときは短絡、電流源を消すときは開放って、なんで消し方が2種類もあるの?消しゴムで消しちゃダメなの?」
「キルヒホッフの法則やテブナンの定理もあるけれど、結局どの問題でどれを使うのが一番ラクなのか分からない……」
教科書を開いても、「回路の線形性より〜」「電源の能力をゼロにすると〜」と難しい言葉でサラッと流されてしまい、イマイチ頭に落ちてこないんですよね。
結論から言うと、重ね合わせの理が成り立つ理由は、電気回路のすべてのパーツやルールが数学的に美しい「1次式(線形)」の構造をしているからです。そして、電源を「消す」という操作も、それぞれの部品が持つ本質的な役割(電圧・電流をゼロにする)を考えれば、丸暗記しなくても一瞬で納得できます。
この記事では、電験1種・技術士を保有する現役エンジニアのデンスケが、「なぜ成り立つのか」という根本的な理由を直感的なイメージでわかりやすく紐解いていきます!
さらに、受験生や実務家にとって最大のメリットである【キルヒホッフ・重ね合わせの理・テブナンの定理】の最強の使い分け基準についても、全く同じ1つの実践例題を3つの解法でガチンコで解き比べながら徹底比較します。
この記事を読めば、複雑な電気回路を前にしたとき、「どの武器を使えば一番ミスなく、最速で答えに辿り着けるか」の最短ルートがひと目でハッキリと見えるようになりますよ!
重ね合わせの理とは?公式の読み方となぜ成り立つかの理由を解説
まずは重ね合わせの理の基本となる「定義」をおさらいし、多くの人が挫折しがちな「なぜ足し算していいのか」という根本的な理由について、スッキリ整理していきましょう。
重ね合わせの理の定義と回路計算の基本手順(やり方)
重ね合わせの理とは、複数の電源(電圧源や電流源)が含まれる回路において、ある場所に流れる電流(または電圧)は、「それぞれの電源が1つだけ単独であるとした場合に流れる電流の和」になるという定理です。
図で示すと次のようになります。

電圧源と電流源があるときに流れる電流 $I_1, I_2, I_3, I_4$ は、電圧源のみがあるときの電流 $I_1’$, $I_2’$, $I_3’$, $I_4’$ と、電流源のみがあるときの電流 $I_1’’$, $I_2’’$, $I_3’’$, $I_4’’$ の和となります。
- $I_1 = I_1’ + I_1’’$
- $I_2 = I_2’ + I_2’’$
- $I_3 = I_3’ + I_3’’$
- $I_4 = I_4’ + I_4’’$
つまり、重ね合わせの理とは、「電源が2つあって計算がややこしいなら、1つずつ別々に計算して、最後にその結果をガッチャンコ(足し算)すればいいよ」という、非常にありがたい定理です。
💡 デンスケの実戦アドバイス
最後に足し算(ガッチャンコ)するとき、「電流の向きと符号の処理」で混乱して失点する受験生が後を絶ちません。アプローチは「最初からすべて同じ矢印の向きに固定して解く」「各回路で値がプラスになる矢印の向きに定義して、最後に矢印の向きを考慮して足し合わせる」など自由ですが、重要なのは自分が今どの向きをプラスとして扱っているかを最後まで見失わないことです。バラした回路図ごとに、電流の矢印と符号の関係を丁寧に追いかけるクセをつけ、ケアレスミスを防ぎましょう!
しかし、ここで誰もが一度は「なんでそんな都合よく足し算していいの?」と疑問に思いますよね。その理由を紐解いていきましょう。
なぜ都合よく足し算していい?本質は回路の「線形性」にある
表記の揺れはあるものの、「重ね合わせの理」と「重ね合わせの原理」は同一の本質を指しており、その根底には、電気回路の方程式のもとになるオームの法則やキルヒホッフの法則が持つ「線形性」という数学的性質があります。
線形性(linearity)とは、簡単に言うと「加法性」と「斉一次(せいいちじ)性」の2つのルールを同時に満たす性質のことです。
① 加法性(Additivity):足し算していいルール
- 数式:$f(x + y) = f(x) + f(y)$
- 電気回路で言うと:「電源Aと電源Bが同時にあるときの電流は、電源A単独の電流と、電源B単独の電流を足したものになる」という性質です。これこそが、まさに重ね合わせの理そのものですね。
② 斉一次性(Homogeneity of degree 1):○倍していいルール
- 数式:$f(a \cdot x) = a \cdot f(x)$
- 電気回路で言うと:「電源の電圧(または電流)を2倍、3倍にしたら、流れる電流も綺麗に2倍、3倍になる」という性質です。
この2つの性質を合わせた「線形性」という概念は、電気分野に限らず、あらゆる工学・理系分野で重要視される基礎知識です。
💡 どういう式なら「線形性」があるの?
数式で言うと、未知数(変数)の1乗だけで構成され、定数項を含まない式には線形性があります。
【線形性がある式のイメージ】
$\qquad f(x) = 3x$
$\qquad f(x, y) = 3x + 2y$
※$f(x, y)$の場合、加法性は $f(x_1+x_2, y_1+y_2) = f(x_1, y_1) + f(x_2, y_2)$、
斉一次性は $f(ax, ay) = a \cdot f(x, y)$ となります。
【電験の罠】「線形」じゃない電力は絶対に重ね合わせNG!
逆に、数式に「2乗」や未知数どうしの「積(掛け算)」が含まれるような非線形(比例関係ではない)なものは、絶対に重ね合わせることができません。
その代表例が「電力」です。電圧降下 $V$($V = RI$)は電流の1乗に比例するので線形ですが、電力 $P$($P = RI^2$)は電流の2乗に比例するため非線形となります。
具体的に、抵抗 $R = 3\,\Omega$ の回路に $5\,\text{A}$($= 2\,\text{A} + 3\,\text{A}$)が流れるケースで比較してみましょう。
【電圧(線形):重ね合わせが成り立つ】
- $V_5 = 3 \times 5 = 15\,\text{V}$
- $V_2 = 3 \times 2 = 6\,\text{V}$
- $V_3 = 3 \times 3 = 9\,\text{V}$
- 結果:$V_5 = V_2 + V_3$($15\,\text{V} = 6\,\text{V} + 9\,\text{V}$ で成立!)
【電力(非線形):重ね合わせは絶対にNG!】
- $P_5 = 3 \times 5^2 = 75\,\text{W}$
- $P_2 = 3 \times 2^2 = 12\,\text{W}$
- $P_3 = 3 \times 3^2 = 27\,\text{W}$
- 結果:$P_5 \neq P_2 + P_3$($75\,\text{W} \neq 12\,\text{W} + 27\,\text{W}$ で不成立!)
「電流」や「電圧」は重ね合わせられますが、「電力」は重ね合わせられないというのは、電験でも実務でも超重要トラップなので必ずセットで覚えておきましょう。
特に実務における「電力系統の潮流計算」では、有効電力 $P$ や無効電力 $Q$ を指定して計算しますが、これらは未知数である電圧 $V$ と電流 $I$ の積(掛け算)が登場して非線形方程式になるため、重ね合わせの理は一切通用しません。
【理論深掘り】電気回路の方程式が持つ「線形性」を数学的に解剖する
「電流や電圧は足し算していい」と言われても、数学的な裏付けがないとイマイチ納得できない方もいるかと思います。そこで、回路の方程式がどのように組み立てられ、なぜ綺麗な線形性を持つのかをもう少し具体的に見ていきましょう。
1. 素子の性質(オーム)も回路のルール(キルヒホッフ)もすべてが線形
ダイオードなどの非線形素子(電流によって抵抗値が変わるもの)を除くと、一般的な電気回路を構成する要素はすべて線形でできています。
- 素子の性質(オームの法則): $V = RI$ (電圧 $V$ と電流 $I$ は常に1次式の比例関係)
- 回路のルール(キルヒホッフの法則):
- 電流則(KCL):$\sum I = 0$ (接続点に流れる電流の純粋な足し算・引き算)
- 電圧則(KVL):$\sum V = \sum E$ (閉路を一巡する電圧降下と起電力の純粋な足し算・引き算)
このように、パーツの性質(オームの法則)も、組み立てるルール(キルヒホッフの法則)も、すべてが変数の1乗(1次結合)だけで構成されています。そのため、これらを組み合わせて立てる回路の方程式は、すべて「線形方程式」になります。
線形方程式とは、含まれる未知数(変数)の次数がすべて「1乗」であり、変数どうしの掛け算(積)や、2乗などを含まない方程式のことです。
💡 デンスケからのアドバイス
ここから先は、電気回路の方程式がなぜ綺麗な足し算になるのかを、数学的に深く掘り下げていきます。「行列」や「ベクトル」といった少し高度な数学の道具を使いますが、電験3種や高校物理の段階では、ここの数式を完璧にマスターしていなくても計算問題は十分に解けます。
「まずは重ね合わせの理の使い方や実務での使い分けを早く知りたい!」という方は、この先の数式ブロックを一旦サラッと読み飛ばして、次の『交流回路でも重ね合わせの理は使える?』まで進んでも全く問題ありませんよ!「数学的な裏付けまでスッキリ納得して、電験2種・1種まで通用する深い実力をつけたい!」という方は、ぜひじっくり読み進めてみてください。
2. 複雑な連立方程式を行列(ベクトル)でシンプルに表す
実際の回路計算では、求めたい未知数(電流など)の数だけ方程式を立てて、連立方程式として解いていきます。なお、線形方程式で構成された連立方程式全体のことを、数学では「線形方程式系」と呼びます。
例として、次の回路(2つの電圧源がある回路)の電流を求めるために、キルヒホッフの電圧則(KVL)を使って連立方程式を組み立ててみましょう。

各枝に流れる電流を $I_1, I_2$ と定義し、キルヒホッフの電流則から右側の抵抗 $R_3$ に流れる電流を $I_1 + I_2$ とします。それぞれの閉路(時計回り)でKVLの式を立てると次のようになります。
- 1つ目の閉路(緑・左側): $R_1 I_1 – R_2 I_2 = E_1 – E_2$
- 2つ目の閉路(青・右側): $R_2 I_2 + R_3(I_1 + I_2) = E_2 \rightarrow R_3 I_1 + (R_2 + R_3)I_2 = E_2$
この2つの方程式(連立方程式)は、「行列」という数学の道具を使うと、次のようにたった1つのシンプルな形にまとめることができます。
$$\begin{pmatrix} R_1 & -R_2 \\ R_3 & R_2 + R_3 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} I_1 \\ I_2 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} E_1 – E_2 \\ E_2 \end{pmatrix}$$
ここで、それぞれの要素を以下のように記号で定義します。
- $\mathbf{A} \equiv \begin{pmatrix} R_1 & -R_2 \\ R_3 & R_2 + R_3 \end{pmatrix}$ インピーダンス行列:抵抗値の集まり・既知
- $\mathbf{x} \equiv \begin{pmatrix} I_1 \\ I_2 \end{pmatrix}$ 電流ベクトル:求めたい未知数
- $\mathbf{b} \equiv \begin{pmatrix} E_1 – E_2 \\ E_2 \end{pmatrix}$ 起電力ベクトル:電圧源の集まり・既知
※「ベクトル」とは、複数の連動するデータ($I_1$ と $I_2$ など)を一丸として扱うための行列表現です。
これらを用いると、複雑な連立方程式は次のように表現できます。
$$\mathbf{A}\mathbf{x} = \mathbf{b}$$
両辺に左から逆行列 $\mathbf{A}^{-1}$ をかけると、解(未知の電流)は次のように求まります。
$$\mathbf{x} = \mathbf{A}^{-1}\mathbf{b}$$
3. 数式の構造で証明!回路全体に「線形写像」が成り立つ証拠
この解の形($\mathbf{x} = \mathbf{A}^{-1}\mathbf{b}$)こそが、回路全体が重ね合わせられる決定的な証拠です。電流ベクトル(解 $\mathbf{x}$)は、入力である起電力ベクトル($\mathbf{b}$)に、抵抗だけで決まる定数(逆行列 $\mathbf{A}^{-1}$)を掛け算しただけの「線形」の構造をしています。
※専門用語では、このように入力(起電力ベクトル)に対して解(電流ベクトル)がある一定の行列を掛けるだけで求められる関係を「線形写像(せんけいしゃぞう)」と呼びます。
行列のままだと少し抽象的でピンとこないと思いますので、これを私たちがよく知る「$I_1$ という1つの電流だけ」に注目して、普通の数式にバラして中身を見てみましょう。すると、次のような綺麗な1次式になっています。
$I_1 = (\text{R}\text{で決まる定数}) \times (E_1 – E_2) + (\text{R}\text{で決まる定数}) \times E_2$
このように、電流の数式構造が「電源(入力)に対して2乗や掛け算を含まない1次式」であるからこそ、中学生のときに習った文字式のカッコを外す計算と同じ感覚で、数式を電源ごとに綺麗にバラすことができるのです。
- 電源グループ①(起電力 $\mathbf{b}_1$)だけがあるときの電流を $\mathbf{x}_1$ とすると: $\mathbf{x}_1 = \mathbf{A}^{-1}\mathbf{b}_1$
- 電源グループ②(起電力 $\mathbf{b}_2$)だけがあるときの電流を $\mathbf{x}_2$ とすると: $\mathbf{x}_2 = \mathbf{A}^{-1}\mathbf{b}_2$
ここで、「電源①と電源②が同時に存在する回路(起電力が $\mathbf{b}_1 + \mathbf{b}_2$)」の全体の方程式を計算してみます。
$\mathbf{x} = \mathbf{A}^{-1}(\mathbf{b}_1 + \mathbf{b}_2)$
数式が線形の構造をしているため、次のように綺麗にカッコを外してバラすことができます。
$\mathbf{x} = \mathbf{A}^{-1}\mathbf{b}_1 + \mathbf{A}^{-1}\mathbf{b}_2 = \mathbf{x}_1 + \mathbf{x}_2$
構造が1次式だからこそ、結果として「それぞれの電源が単独であったときの電流の和」が完璧に成り立ち、回路全体が線形性を有していることが証明されました。
複数の電源がどれだけ複雑に入り混じっていても、「1つずつ別々に計算して、最後にその結果を足し算(ガッチャンコ)すればいい」という重ね合わせの理が成り立つのは、回路の方程式がこの構造を崩さないからなのです。
(※今回は電圧源をベースに説明しましたが、電圧源と電流源は等価変換が可能なため、電流源が含まれていても全く同じように1次式の構造になり、重ね合わせの理が成り立ちます。)
交流回路でも重ね合わせの理は使える?フェーザ表示(複素数)への適用をスッキリ解説
高校物理では「直流回路」をベースに習うため、電験の勉強などで本格的な「交流回路」に入った途端、「複素数やフェーザ(ベクトル)が出てきても、重ね合わせの理って本当に使っていいの?」と不安になる人が非常に多いです。
結論から言います。交流回路でもまったく同じように使えます!
なぜなら、交流回路になってもオームの法則の形( $\dot{V} = \dot{I}\dot{Z}$ )は変わらないからです。抵抗がインピーダンス( $\dot{Z}$ )になり、電圧や電流がフェーザ表示( $\dot{V}, \dot{I}$ )という複素数に変わったとしても、「電流と電圧が比例関係(線形)である」という本質はまったく変わりません。
直流だろうが、位相がズレまくる複素数の交流だろうが、回路が「線形」である限り、重ね合わせの理はいつでも私たちの強力な味方になってくれます。
重ね合わせの理で電源を「消す」の本当の意味|なぜ短絡と開放の2通りあるのか?
重ね合わせの理を使うとき、誰もが必ず通る最初の関門があります。それが、「電源を消す」という操作です。
回路に電源が複数ある場合、1つの電源だけを残して残りの電源を「消去」した回路を作らなければなりません。このとき、教科書にはサラッとこう書かれています。
- 電圧源を消すとき = 短絡(ショート)する
- 電流源を消すとき = 開放(オープン)する
これを見て、「なんで消し方が2種類あるの?」「消すならどっちも回路から消しゴムで消しちゃ(開放しちゃ)ダメなの?」とパニックになってしまう人が後を絶ちません。
でも、安心してください。電圧源と電流源が「そもそも何をしている部品なのか」という本質に戻れば、このルールは一瞬で納得できます。
① 電圧源を消す=「短絡(ショート・導線にする)」となる理由
電圧源(電池など)の本来の仕事は、「何が何でも、指定された電圧(電位差)をキープすること」です。
ということは、電圧源を「消す(機能をゼロにする)」ということは、「電位差をゼロ(0V)にする」という意味になります。
回路の中で、2点間の電位差がゼロ(どこを測っても電圧の落差がない)の場所といえばどこでしょうか?そうです、ただの「導線(抵抗ゼロの線)」ですよね。
オームの法則 $V = RI$ で考えてみましょう。抵抗 $R$ が完全にゼロ($R = 0$)であれば、どんなに大きな電流が流れても電位差 $V$ は常にゼロになります。
つまり、電位差をなくして0Vにするということは、その場所を「1本の導線でつなぐ(短絡・ショートする)」こととまったく同じ意味になるのです。だから、電圧源があった場所は、すっぽりと導線に置き換えます。
② 電流源を消す=「開放(オープン・断線させる)」となる理由
一方で、電流源の本来の仕事は、「何が何でも、指定された電流(A)を流し続けること」です。
ということは、電流源を「消す(機能をゼロにする)」ということは、「流れる電流をゼロ(0A)にする」という意味になります。
回路の中で、絶対に電流が流れない状態を作るにはどうすればいいでしょうか?一番手っ取り早いのは、その場所をハサミで「プチッと切って断線させる(開放・オープンする)」ことですよね。
こちらもオームの法則 $I = \frac{V}{R}$ で考えてみましょう。抵抗 $R$ が無限大($R = \infty$)であれば、どんなに大きな電圧がかかったとしても、流れる電流 $I$ はゼロになります。
つまり、通り道をなくして電流を0Aにするということは、その場所を「切り離して隙間をあける(開放する)」ことと同じ意味になります。だから、電流源があった場所は、何もつながっていない「行き止まり」の形に置き換えます。
【図解で一目瞭然】電源を消すイメージのビフォー・アフターを整理
頭の中を整理するために、見た目のイメージを固定しておきましょう。

- 電圧源を消す: 電圧を0Vにする = 2点間に高低差がない ただの「平らな道(導線)」にする
- 電流源を消す: 電流を0Aにする = 電流が絶対に通れない 「通行止めの壁(断線)」にする
「消しゴムで消す=開放」だと思い込んでいると、電圧源のときに間違えてしまいます。これからは「消す」ではなく、「その電源の能力(電圧・電流)をゼロにするには、回路をどう改造すればいいか?」という視点で考えてみてください。そうすれば、もう二度と迷わなくなりますよ!
電気回路の計算ミスを激減させる「3大アプローチ」の強みと最強の使い分け基準
複雑な電気回路を目の前にしたとき、私たちはどのような武器(解法)を使って立ち向かえばいいのでしょうか?
実は、電気回路の計算における主要なアプローチは「キルヒホッフの法則」「重ね合わせの理」「テブナンの定理」の3つしかありません。
「どれか1つを極めればいいのでは?」と思うかもしれませんが、それは間違いです。なぜなら、回路の形や電源の数によって「圧倒的にラクに解ける解法」がそれぞれ異なるからです。
まずは、これら3つの武器が持つそれぞれの特徴と、試験や実務で一瞬で判断できるようになる「使い分け基準」をスッキリ整理していきましょう!
どれを使うのが正解?キルヒホッフ・重ね合わせ・テブナンの特徴とメリット・デメリット
複雑な回路を攻略する「3つの武器」について、それぞれの強みと弱みを丸裸にしていきましょう。
① 王道にして力技!どんな回路も確実に解ける「キルヒホッフの法則」
【特徴】回路のすべての回路網(枝)に対して電流を仮定し、方程式を愚直に立てて解く基本技。
- メリット:どんな複雑な回路でも確実に解ける!
- 電流則(KCL)を用いて電流を仮定し、閉路を見つけて電圧則(KVL)から方程式を作るだけなので、「方程式を組み立てる作業」がとにかくシンプルで迷いません。
- 他の定理の使い方をど忘れしてしまったときの「最終手段」として、常に頼りになります。
- デメリット:回路が大きくなると計算地獄に陥る…
- 未知数が増えると「3元連立方程式」「4元連立方程式」と計算量が膨大になり、試験や実務で最も避けたいケアレスミスの温床になります。
② 複数の電源をバラして直感的に解く「重ね合わせの理」
【特徴】複数の電源を1つずつにバラして別々に計算し、最後にその結果をガッチャンコ(足し算)する方法。
- メリット:頭のネジを緩めてオームの法則だけで解ける!
- 電源が2つも3つもあるややこしい回路でも、計算時は常に「電源が1つだけのシンプルな回路」に落とし込めるため、直感的にサクサク解き進められます。
- デメリット:電源が多すぎると作業量が増える…
- 電源の数だけ「回路図を書き直して計算する」というステップを繰り返す必要があるため、電源が4つも5つもあると逆に手間がかかってしまいます。
③ 複雑な回路をギュッと1つに凝縮する「テブナンの定理」
【特徴】複雑に入り組んだ回路全体を、たった1つの「理想電圧源(開放電圧)」と1つの「抵抗(等価抵抗)」にギュッと凝縮して置き換える魔法のような定理。
- メリット:「特定の1箇所」を狙い撃ちするときに圧倒的最速!
- 出口の抵抗に流れる電流だけを知りたい場合、他のどの解法よりも少ない計算量で、一撃で答えに到達できます。
- デメリット:等価回路を作るまでのパズルに慣れが必要…
- 回路を凝縮するための「開放電圧 $V_{th}$」と「等価抵抗 $R_{th}$」を求める計算手順に、少しコツと慣れが必要です。
💡 【さらに一歩先へ!デンスケの理論深掘り】
回路をスッキリ一撃で仕留められる強力なテブナンの定理ですが、「なぜこんな魔法のようにたった1つの電源と抵抗に化けてしまうのか?」と不思議に思いませんか?
実は、テブナンの定理が成り立つ原理の正体は、まさにこの記事のメインテーマである「重ね合わせの理」そのものなのです。
当ブログでは、この2つの定理の美しい繋がりを、現役インフラエンジニアの視点からどこよりも分かりやすく図解で証明した記事も公開しています。「使い方(応用)」だけでなく「成り立ち(原理)」まで100%納得して、回路を解く洞察力をケタ違いに高めたい方はぜひあわせて読み込んでみてください
【一目でわかる比較表】試験・実務で迷わない3大解法のジャッジ基準
どの解法を使うべきか迷ったときは、以下の基準で選ぶと計算ミスが激減し、解答スピードも劇的に上がります!
| 解法 | どんなときに向いている? (最強のシチュエーション) | 避けた方がいいとき |
|---|---|---|
| キルヒホッフ | ・回路が小さく、連立方程式がすぐ解けるとき ・他の定理を忘れてしまったときの最終手段 | ・電源やループの数が多く、連立方程式が複雑になるとき |
| 重ね合わせの理 | ・電源が複数(電圧源と電流源の混在など)あるとき ・電源を消した後の回路が、単純な直並列回路になるとき | ・電源の数が多すぎて、何回も計算を繰り返すのが面倒なとき |
| テブナンの定理 | ・回路の中の「特定の1箇所」の電流・電圧だけを求めたいとき ・負荷の抵抗値だけがコロコロ変わるときの影響を見たいとき | ・回路全体のすべての箇所の電流をくまなく調べたいとき |
それでは、次の章でまったく同じ1つの例題を使い、これら3つのアプローチで実際に解き比べてみましょう。どのくらい計算の手間とストレスが変わるのか、リアルに体感できるはずです!
【実践例題】1つの回路を3つの解法で解き比べ!計算の手間を徹底比較
次のような、電圧源(40V)と電流源(1A)が混ざった回路があります。一番右の抵抗 $R_4 = 5\,\Omega$ に流れる電流を、3つのアプローチでそれぞれ求めてみましょう。

【各素子のスペック】
- 電圧源:$E_1 = 40\,\text{V}$
- 電流源:$I_2 = 1\,\text{A}$
- 各抵抗:$R_1 = 10\,\Omega$ 、 $R_3 = 30\,\Omega$ 、 $R_4 = 5\,\Omega$
解法①:基本に忠実な「キルヒホッフの法則」で愚直に連立方程式を解く
まずは、すべての基本にして王道であるキルヒホッフの法則で愚直に攻めてみましょう。
準備として、各路線の電流の向きを以下のように仮定します。
- 左端の路線($R_1$):$I_1$(上向き)
- 左から2番目の路線:電流源があるため、流れる電流は $1\,\text{A}$(上向き)で固定
- 左から3番目の路線($R_3$):$I_3$(下向き)
- 右端の路線($R_4$):$I_4$(下向き)

1. 接続点に着目して電流則(KCL)の式を立てる
上の接続点(ノード)に「流入する電流」と「流出する電流」の合計は等しいので、次の式が成り立ちます。
流入 $I_1 + I_2$ = 流出 $I_3 + I_4$
今回は $I_4$ を求めたいので、式を $I_4$ について整理しておきます。
$I_4 = I_1 + I_2 – I_3$ ─── ①
2. 電流源を避けて電圧則(KVL)の方程式を立てる
次に、回路の中にぐるっと1周する「閉路(ループ)」を2つ見つけて、電圧のバランスの式を立てます。

- 左側(緑)の閉路を時計回りに1周:$R_1 I_1 + R_3 I_3 = E_1$ ─── ②
- 右側(青)の閉路を時計回りに1周:$-R_3 I_3 + R_4 I_4 = 0$ ─── ③
💡 【コラム】閉路を選ぶときは「電流源」を避けるのが鉄則!
電流源は「流れる電流」こそ分かっていますが、「端子間の電圧」は回路全体を見るまで分かりません(0Vではありません)。
もし電流源を含むループでKVLの式を立てようとすると、電流源の電圧を「新しい未知数」として設定しなければならず、式も文字も増えてドツボにハマります。
これは、$I_1$~$I_4$を求めるというゴールに対して、全く前進していない状態です。
無駄な文字を増やして自滅しないためにも、
「KVLのループは電流源を避けて通る」と覚えておきましょう。
3. 連立方程式を解く
ここからは、立てた①、②、③の式を使って、ターゲットである $I_4$ を炙り出すための数学の計算ゲームです。
ステップ①:式①を式③に代入して、文字 $I_4$ を一旦消去する
$$-R_3 I_3 + R_4 (I_1 + I_2 – I_3) = 0$$
これを整理して、未知数($I_1, I_3$)を左辺に、既知数($I_2$)を右辺に集めます。
$$R_4 I_1 – (R_3 + R_4)I_3 = -R_4 I_2─── ④$$
ステップ②:式②と式④から $I_1$ を消去して、先に $I_3$ を求める
$I_1$ を消すために、消去法(加減法)を使います。
式②の両辺に $R_4$ をかける $\rightarrow R_1 R_4 I_1 + R_3 R_4 I_3 = R_4 E_1$
式④の両辺に $R_1$ をかける $\rightarrow R_1 R_4 I_1 – R_1 (R_3 + R_4)I_3 = -R_1 R_4 I_2$
この2つの式の引き算を行うと、$I_1$ の項が綺麗に消えてくれます。
$$(R_1 R_3 + R_3 R_4 + R_4 R_1)I_3 = R_4 E_1 + R_1 R_4 I_2$$
これを $I_3$ について解きます。
$$I_3 = \frac{R_4 E_1 + R_1 R_4 I_2}{R_1 R_3 + R_3 R_4 + R_4 R_1}─── ⑤$$
ステップ③:残った $I_1$ の式を導く
式②を $I_1$ について解き、そこに先ほどの式⑤を代入して整理すると、次のようになります。
$$I_1 = \frac{(R_3 + R_4)E_1 – R_3 R_4 I_2}{R_1 R_3 + R_3 R_4 + R_4 R_1}─── ⑥$$
ステップ④:数値を代入してゴール!
ようやく文字式の準備が整いました。ここにスペックの数値を代入していきましょう。
- $I_1$ の計算:
$$I_1 = \frac{(30 + 5) \times 40 – 30 \times 5 \times 1}{10 \times 30 + 30 \times 5 + 5 \times 10} = \frac{1400 – 150}{300 + 150 + 50} = \frac{1250}{500} = 2.5\,\text{A}$$ - $I_3$ の計算:
$$I_3 = \frac{5 \times 40 + 10 \times 5 \times 1}{10 \times 30 + 30 \times 5 + 5 \times 10} = \frac{200 + 50}{500} = \frac{250}{500} = 0.5\,\text{A}$$
以上から、本当に知りたかった一番右の抵抗 $R_4$ に流れる電流 $I_4$ は、式①より次のように求まります!
$$I_4 = I_1 + I_2 – I_3 = 2.5 + 1 – 0.5 = 3\,\text{A}$$
💬 デンスケの実感レビュー
今回は左から2番目の電源が「最初から1Aと分かっている電流源」だったため、実質2元連立方程式で済み、まだマシな方でした。しかし、これが「両方とも電圧源」だったりすると、3元連立方程式になり、計算ミスとの壮絶な戦いになります。試験本番の一発勝負でこの力技を繰り出すのは、なかなかの心臓破りですよね。
💡 【コラム】電流源は電圧源に等価変換できる?
式④の右辺に登場する $R_4 I_2$ という形に注目してみると、「抵抗×電流」の形、つまり「電圧(V)」の次元になっていることが分かります。前半のパートで「電流源と電圧源は等価変換可能」と説明した理由は、まさにこれです。キルヒホッフで式を整理すると、電流源のデータは自動的に「等価的な電圧源(起電力)」の形に化けて数式に組み込まれます。公式の丸暗記に頼らなくても、数式が勝手に等価変換をして辻褄を合わせてくれている、とイメージするとスッキリ納得できますよね!
💡 【コラム】実務なら「行列計算×Excel」で一瞬!
今回は手計算で連立方程式を解きましたが、数学の手法である「行列計算」を用いて解(電流)を直接求めるアプローチもあります。手計算だと手間はそれほど変わりませんが、実務でPC(Excel)が使える環境であれば話は一変します。Excelには、逆行列を求める MINVERSE 関数や、行列の掛け算を行う MMULT 関数が用意されています。キルヒホッフの法則で回路の方程式(行列の形)さえ作ってしまえば、あとはExcelに入力するだけで、3元だろうが4元だろうが一瞬で答えを弾き出してくれます。実務のデスクワークにおいては、「キルヒホッフで式を作ってExcel行列計算に丸投げ」が最も楽で確実なケースも多々あります。
解法②:電源を1つずつバラす「重ね合わせの理」で直並列の計算に落とし込む
次は、本日の主役「重ね合わせの理」を使って解いてみましょう。電圧源(40V)だけを残した回路と、電流源(1A)だけを残した回路の2つに分解し、ターゲットの抵抗 $R_4$ に流れる電流をそれぞれ求めて足し合わせます。
1.電流源を「開放」し、電圧源だけの回路で分流を計算する
まずは電流源を「消す」ので、右側の電流源の場所を開放(プチッと断線)します。

電流源のあった路線は断線しているため、電流は1滴も流れません。回路全体を見渡すと、40Vの電源に対し、抵抗 $R_3$ と $R_4$ の並列接続に、抵抗 $R_1$ が直列につながったシンプルな形になります。
このときの回路全体の合成抵抗 $R’$ は次のようになります。
$$R’ = R_1 + \frac{R_3 R_4}{R_3 + R_4} = 10 + \frac{30 \times 5}{30 + 5} = 10 + 4.286 = 14.286\,\Omega$$
電源から回路全体に供給される電流 $I_1’$ は、オームの法則より、
$${I_1}’ = \frac{E_1}{R’} = \frac{40}{14.286} = 2.8\,\text{A}$$
この電流 $I_1’$ が、抵抗 $R_3$ と $R_4$ の分岐点に到達し、抵抗の大きさの逆比で分流します。求めたい右端の抵抗 $R_4$ に流れる電流 $I_4’$ は、分流の法則から一発で求まります。
$${I_4}’ = {I_1}’ \times \frac{R_3}{R_3 + R_4} = 2.8 \times \frac{30}{30 + 5} = 2.4\,\text{A}$$
2.電圧源を「短絡」し、電流源だけの並列回路で分流を計算する
今度は電圧源を「消す」ので、左側の電圧源の場所を短絡(ただの導線)します。

電流源から出た1Aの電流は、上の接続点で $R_1$ ルート、$R_3$ ルート、$R_4$ ルートの3つに分流します。それぞれの抵抗はすべて並列につながっており、かかる電圧は等しいため、ここでも抵抗の逆比で分流します。
一番右の抵抗 $R_4$ に流れる電流 ${I_4}^{\prime\prime}$ は、並列回路の分流の式より、
$${I_4}^{\prime\prime}= I_2 \times \frac{\frac{1}{R_4}}{\frac{1}{R_1} + \frac{1}{R_3} + \frac{1}{R_4}} = 1 \times \frac{\frac{1}{5}}{\frac{1}{10} + \frac{1}{30} + \frac{1}{5}} = 1 \times \frac{0.2}{0.1 + 0.0333 + 0.2} = 0.6\,\text{A}$$
3.電流の向きを確認し、2つの結果を足し合わせる(ガッチャンコ)
電圧源(40V)と電流源(1A)のどちらも存在しているときに流れる電流は、重ね合わせの理から、それぞれの回路で求めた電流の和になります。

1つ目の回路の ${I_4}’$(2.4A)と2つ目の回路の ${I_4}^{\prime\prime}$(0.6A)はどちらも同じ「下向き」に流れているため、符号はどちらもプラスのまま純粋に足し算して $I_4$ を求めます。
$$I_4 = {I_4}’ + {I_4}^{\prime\prime} = 2.4 + 0.6 = 3\,\text{A}$$
💬 デンスケの実感レビュー
どうでしょうか?キルヒホッフのときのような連立方程式を解く数学的ストレスが一切なく、「ただの直並列回路のオームの法則」と「ただの分流比の計算」という、中学理科レベルの基本計算だけでまったく同じ答えに辿り着きました。回路図を複数描く手間こそありますが、複雑な数式をこねくり回さない分、ケアレスミスのリスクを大幅に低減できるのがこの定理の最大の強みです!
解法③:回路をスッキリ凝縮する「テブナンの定理」で一撃で仕留める
最後に、大ボス「テブナンの定理」を試してみましょう!今回のターゲットである一番右の抵抗 $R_4 = 5\,\Omega$ を一度回路から「プチッ」と切り離し、残された「電圧源と電流源が混ざった不気味な回路」を、たった1つの電圧源(開放電圧)と1つの抵抗(等価抵抗)だけのシンプルな等価回路にギュッと凝縮します。

【おさらい】テブナンの定理の定義と電流を求める基本公式
テブナンの定理とは、任意の回路の2点間に抵抗 $R$ を接続したとき、その抵抗に流れる電流は次の式の通り、開放電圧と等価抵抗を用いて求めることができるという定理です。
$$I = \frac{V_{th}}{R_{th} + R}$$
- $I$:接続した抵抗に流れる電流
- $R$:接続する抵抗の大きさ
- $V_{th}$:抵抗を接続する前の2点間の電位差(開放電圧)
- $R_{th}$:2点から回路側を見た合成抵抗(等価抵抗)
※等価抵抗を計算するとき、回路内の電圧源は「短絡」、電流源は「開放」して消去します。
1. ターゲットの抵抗を切り離し、端子間の開放電圧($V_{th}$)を求める
ターゲットである抵抗 $R_4$ を回路から「プチッ」と切り離し、端子をオープン(開放)にした状態の電圧を求めます。

残された回路の電流を求めるために、キルヒホッフの法則を使ってサクッと方程式を組み立てていきましょう。
ステップ①:電流の向きを仮定して電流則(KCL)を適用する
まずは準備として、左端の路線($R_1$)に流れる電流を上向きに $I$ と仮定します。上の接続点(ノード)に着目すると、電流源から上向きに $I_2$(1A)が合流してくるため、右端の路線($R_3$)に流れる電流は、自動的に下向きに $I + I_2$ と求めることができます。
ステップ②:外周のループに電圧則(KVL)を適用する
電流源を避けて、ぐるっと外回りを1周する閉路(時計回り)に着目して電圧のバランスの式を立てます。
$$E_1 = R_1 I + R_3(I + I_2)$$
ステップ③:方程式を解いて数値を代入する
この式を仮定した電流 $I$ について解き、回路の数値を代入します。
$$I = \frac{E_1 – R_3 I_2}{R_1 + R_3} = \frac{40 – 30 \times 1}{10 + 30} = \frac{10}{40} = 0.25\,\text{A}$$
ステップ④:$R_3$ に流れる本当の電流を計算する
左端の電流 $I$ が 0.25 A と分かったので、知りたかった右端の路線($R_3$)に流れる実際の電流は次のようになります。
$$I + I_2 = 0.25 + 1 = 1.25\,\text{A}$$
端子は開放されているため、この抵抗 $R_3$ にかかる電圧が、そのまま求める開放電圧 $V_{th}$ になります!
$$V_{th} = R_3 \times (I + I_2) = 30 \times 1.25 = 37.5\,\text{V}$$

2. すべての電源を消去し、端子側から見た等価抵抗($R_{th}$)を求める
すべての電源を消去(電圧源を短絡、電流源を開放)し、端子側から回路を逆に見返したときの合成抵抗を求めます。
端子から見ると、抵抗 $R_1$ と $R_3$ が並列につながっているだけの状態であるため、等価抵抗 $R_{th}$ は並列の合成抵抗の公式から一発で求まります。
$$R_{th} = \frac{R_1 R_3}{R_1 + R_3} = \frac{10 \times 30}{10 + 30} = \frac{300}{40} = 7.5\,\Omega$$

3. 完成したテブナン等価回路に抵抗を戻して最終電流をオームの法則で解く
これでパズルは完成です。複雑だった元の回路は「37.5Vの電圧源に、7.5Ωの等価抵抗が直列につながっただけのシンプルな等価回路」に化けました。
ここに、最初に切り離していた本命の $R_4$(5Ω)を戻してつなぎます。

求める電流 $I_4$ は、このシンプルな直列回路のオームの法則(テブナンの公式)から、簡単に計算できます!
$$I_4 = \frac{V_{th}}{R_{th} + R_4} = \frac{37.5}{7.5 + 5} = \frac{37.5}{12.5} = 3\,\text{A}$$
💬 デンスケの実感レビュー
最初の $V_{th}$ と $R_{th}$ を求めるパズルに少し頭を使いますが、等価回路さえ作ってしまえば、最後の計算はオームの法則一発で非常に爽快です!もし実務や問題で、「右端の抵抗 $R_4$ の値を、5Ωから6Ωや4Ωにコロコロ変えたら電流はどう変わる?」と聞かれても、テブナンなら最後の公式の $R_4$ の数字を入れ替えるだけで一瞬で再計算できます。ターゲットの抵抗値が変動するシチュエーションにおいては、他のどの定理よりも圧倒的に最強の武器になります!
【プチまとめ】全く異なる3つの解法を解き比べて見えてきたこと
全く異なる3つのアプローチで解き比べましたが、どれも同じ「3 A」という答えに辿り着きました。どれを使うかによって、計算のラクさや脳みその疲労度が全く違うことをリアルに体感していただけたと思います。
3つの武器の特性を、ここで一度ギュッと整理しておきましょう!
| 解法 | 計算のストレス度 | 特徴 |
|---|---|---|
| ① キルヒホッフ | 🤯 高 (連立方程式が面倒) | どんな回路も100%解ける。ただし、式を解くプロセスが「泥臭い計算ミスとの戦い」になる。 |
| ② 重ね合わせ | 😊 低 (基本の足し算だけ) | 電源を1つずつにバラすので、複雑な数式をこねくり回す必要がない。視覚的にサクサク解ける。 |
| ③ テブナン | 😎 爽快 (等価回路で一撃) | 等価回路に化けさせるまではパズルだが、一度回路が凝縮されてしまえば、最後はオームの法則で一撃必殺。 |
【まとめ】重ね合わせの理の本質をマスターして回路計算を劇的に効率化しよう!
今回は、電気回路の強力な武器である「重ね合わせの理」について、なぜ成り立つのかという本質から、他の3大アプローチとの使い分けまで徹底的に解説してきました。
最後に、実戦や試験で特に重要なポイントを振り返りチェックシート形式でおさらいしておきましょう!
📝 重ね合わせの理:超重要ポイントまとめ
- ✅ 重ね合わせの理の本質: 複数の電源が含まれる回路を「電源が1つだけのシンプルな回路」にバラして計算し、最後に足し算(ガッチャンコ)する非常にありがたい定理。
- ✅ なぜ足し算していいのか: 回路を構成するオームの法則やキルヒホッフの法則が、変数の1乗だけで構成される「線形性」を持っているから。
- ✅ 【電験の罠】電力は非線形: 電流・電圧は重ね合わせられるが、電力(P = RI²)は2乗の比例関係(非線形)なので 絶対に重ね合わせNG!
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電源を「消す」の本当の意味:
- 電圧源を消す = 電圧を0Vにする = 短絡(ショート・ただの導線)
- 電流源を消す = 電流を0Aにする = 開放(オープン・断線)
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3大アプローチの使い分け基準:
- キルヒホッフの法則:回路が小さく、迷わず機械的に式を立てたいとき(実務でExcelが使えるなら行列計算で最強の武器になる)。
- 重ね合わせの理:電源が複数あり、消去後の回路が単純な直並列回路になるとき。
- テブナンの定理:回路の中の「特定の1箇所」の電流や電圧だけを最速で狙い撃ちしたいとき。
電気回路の方程式が持つ「線形性」の美しさや、3つの武器の使い分けのジャッジ基準が分かると、複雑な回路を目の前にしたときの安心感が全く違ってきますよね。
ぜひ今回の例題の計算プロセスを何度も見直して、試験や実務の現場で「一番ラクに解ける最短ルート」を瞬時に見抜ける感覚を養っていってください!
デンスケでした!また次回の記事でお会いしましょう!



